矯正治療のリスクとその回避法:知っておきたいこと

個人差のリスク

矯正歯科治療も医療の一つですから、必ず個人差があります。したがって、治療に対する反応は患者さんによって異なりますので治療期間や結果にも影響を与えます。

むし歯のリスク

甘いものや酸性の食べ物を摂取したあと、歯磨きがしっかりと行われていないと、むし歯になりやすくなります。特に歯につける矯正装置が装着されているときは歯磨きが難しくなるので、むし歯のリスクが高くなります。当院では調整中も使い捨ての清潔な専用ブラシで調整ごとに必ずクリーニングを行いますので矯正治療中のむし歯のリスクを抑える診療を心がけております。また、矯正治療が始まる前には関連する口腔ケアグッズを詳しく教えております。

歯根吸収のリスク

 矯正治療では歯を移動しようとすると歯や歯根に力がかかります。患者さんによっては歯根が短くなるといった変化が生じることがあります。その原因については、まだよくわかっていませんので歯を動かす前にどの患者さんにそうしたことが起こりうるのかを特定することは必ずしも可能ではありません。矯正力を生理的な力で動かすことで歯根吸収を最小限に抑えて治療しております。なお歯根吸収が生じても、ほとんどのケースでは特に重大な結果をまねく事はありません。

顎関節の不快感

患者さんによっては、矯正治療中に、あごの関節に不快感が生じることがあります。これは通常一時的なもので、矯正装置をつけていない人でもこのような症状は起こり得ます。

治療後の後戻り

矯正治療をしたかしないかに関わらず、一生の間に筋肉、骨の形、歯の位置は変化しますが、矯正歯科治療後では徐々に後戻りの力が働いてきますので後戻りや変化を最小限に抑えるために矯正治療後には必ず保定装置(リテーナー)を装着しなければなりません。ドクターの説明をしっかりとお聞きになって、その指示に良く従うことで後戻りのリスクを小さくすることができます。

矯正治療の一般的な治療期間と通院回数について

非抜歯矯正は抜歯矯正と比べ治療は早く終わる傾向があります。非抜歯矯正は約18か月~24か月程度、抜歯矯正では約24か月~36か月程度かかります。

※治療の期間は個人差があります。さらに治療プランによって期間が異なります。例えば、オートローテーションで顎の移動をしたり口元の後退で特に上顎の前歯を後退させるときや臼歯の近心移動がある場合等でこれ以上に期間がかかることがあります。

通院の回数ですが、当院では約1か月半くらいのペースで通院していただく形で治療を進めていきます。

 

矯正治療中の食べものに関する注意

矯正治療中は、食事にも気をつけてください。固いもの、例えばせんべいなどを勢いよく食べてしまうと装置が外れてしまう可能性があります。固いお肉などはなるべく避けるか、小さくしてから食べてください。またキャラメルやソフトキャンディー類は固いだけでなくショ糖を多く含み歯や装置にくっつきやすく、むし歯になりやすくなりますのでお菓子を食べた後は歯磨きをしましょう。

装置が外れる原因となる食べ物
  • 氷の塊・飴・ドロップを咬む(なめるのはOK)
  • せんべい・タクアン・スルメ・あられ
  • 硬いステーキ・りんごなどの果物丸かじり
  • ピーナッツなどナッツ類
  • フランスパンの皮 など

など固い食べ物は装置が外れる原因となります。

虫歯の原因となる食べ物
  • キャラメル・ソフトキャンディー(最初は固い)
  • 大福・カステラ など

これらに代表されるような、砂糖(ショ糖)を使用した製品で粘着性の高いものは避けましょう。

痛みがあるときの食事の工夫

ワイヤー装着後、3~7日間は独特の痛みが出ます。かまなくても食べれるように煮る、細かく刻む、牛乳・スープなどにひたす、つぶす、ミキサーにかけるなど、食事を工夫してその間は過ごしてください。

調理例

お粥、麩、うどんやそばを短く切る、よく煮込んだ里芋、マッシュポテト、豆腐料理、ミキサーにかけた枝豆、ひき肉料理、卵料理、かぼちゃのポタージュ、野菜ジュース、大根おろし、生フルーツジュース など

 

裏側矯正のリスク3つ

1.清掃性が悪い

裏側矯正で最も気を付けなければならないのが歯磨きです。特に歯茎に近い部分に歯ブラシが届きにくく、前歯の裏などは見えないので特に上の前歯の裏の歯茎が腫れやすくなります。ひどい場合には歯茎から血がでたり装置が被るぐらいまで歯茎が腫れてしてしまうこともあります。装置がまったく見えなくなるほど腫れてしまった場合には麻酔をして歯茎を切る必要もあります。

2.違和感

装置の大きさでも違和感は異なりますが、口の裏側に何かついているというのは舌が収まる場所を狭くするので呼吸を含め非常に違和感を伴います。特に下の裏側装置は舌に直接刺さったり擦れたりするので上に比べて違和感が強いことが特徴です。ですので上だけ裏側、下は表側の白い装置という”ハーフリンガル”も人気の裏側矯正になっています。どうせ口を開けると下は見えやすいですし笑っても上の歯しか見えない人が多いため見た目にも気にならない人も多くいます。

3.発音

違和感とともに発音にも障害がでます。慣れる方がほとんどですが、装置を装着して数か月は舌足らずな発音になります。特にサ行やタ行など舌を前歯につけて発音する音に障害が出やすいので注意してください。

裏側矯正が表側と比べて清掃性が悪い理由

私が最も裏側矯正でリスクとして考えているのが清掃性の悪さです。先ほども述べましたように裏側矯正装置は歯の裏についているため人に気づかれにくいというというメリットがありますが同時に自分にも見えにくく歯ブラシがしにくくなります。歯ブラシで歯や歯茎のケアをする際、表側に装置がついているとどこに歯ブラシが当たっているのか鏡で見てわかりますし、見ながらやれるので毛先の操作もしやすいです。

一方、裏側矯正装置がついている方の歯磨きでは特に上顎の装置が見えにくいため頭を後ろに傾けないと鏡に映らず歯ブラシの位置を確認しながら磨くことが難しくなります。一般に矯正装置がついている間はワイヤーの真上から歯ブラシを当てる操作に加えて上下斜め45度の方向から、つまり歯茎側と咬む面側からのブラシ操作が必要です。裏側矯正では歯茎側から斜めに歯ブラシを当てることがほぼ不可能なのでワンタフトブラシという特殊な歯ブラシで歯茎側を磨きます。表側からの矯正治療でもワンタフトブラシは大活躍してくれますが裏側矯正ではこのワンタフトブラシがないと歯茎付近にプラークや食渣が溜まり歯茎が腫れ次第に出血してきます。

当院における裏側矯正のクリーニング

当院では裏側矯正の清掃性を上げるために殺菌成分クロルヘキシジンの入ったうがい薬(コンクール・オーラルクール等)でうがいの励行とワンタフトブラシにその殺菌含嗽液を少量を塗布して清掃指導しています。これを指導すると細菌特有の臭いが出ていた方でも1か月後には驚くほど臭いが減っています。

※矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。

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